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勝見里奈 写真展

『なぜならそこに生まれたから』

2026/4/18(sat) - 5/17(sun)

12:00-19:00 会期中無休

そのうちcafe SNC 京都府京都市下京区塗師町119

※ワンオーダー制


2025年、記憶システムが混線した祖母は、自身の幼い頃のことをよく話してくれるようになった。

もともとあまり自分のことを話さない人だった。口数が少ないというわけではなく、むしろ快活でよく笑う人だ。

家族のためにたくさん料理をし、映画や小説を好み、ものすごく大きなくしゃみをした。

祖母の生まれ故郷は造船の盛んな港町の離れ小島で、彼女は時計屋の娘だった。

私たちはみな、生を受けるその地に印画された光のようだ。

私は訪ね歩く。

たとえそこに暮らしていなくとも、思い出のかけらを掴むことができなくとも、

扉は常に開かれていて、私は「そこ」に立っている。

「そこ」が「ここ」になることは、永遠にない。

それが撮るということなのだろう。


DMデザイン:櫻井祐介


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勝見里奈写真展

『未明の記憶』

今になって、右手の人差し指に小さなかさぶたがあることに気がついた。

それは引っ越しの時にできたものだった。

今年の春まで住んでいた部屋はアパートの3階にあったから 段ボールを抱えて、せまい階段を下るのにすりむいてしまったのだ。

もう帰ることのない部屋の痕跡が、指の上に残っていた。

過ぎたことは大きな一枚の布のようにひらたく横たわっている。

わたしたちには現在しかないのに、

小さなかさぶたがもたらすほころびが、時に脳裏で乱反射する。


( ゼラチンシルバープリント )

勝見里奈第一作目の写真集。一年という時間を、北海道鶴居村に生活しながら撮影したスナップ作品群となっている。

「常にたどり着く前に、その空間を通り抜けた数多の植物や、風、人々、あるいは名前のつかないものたちがあること。

気づいては消え、口にしては消え、それでもいつかどこかにおいて、無かったことにはならないものたちと出会いなおす時、風景は空っぽになり、ばらばらに思えたものはひとつの身体へと帰りゆく。

なにかが在るということも無いということも、変わらずそうあるならば、何度忘れても大丈夫なのだと今なら言えるだろう。

全てのまわり道に意味があり、全ての物事に意味はない。

家はずっとそこにあったのだ。」

2019年11月22日 初版発行

編集 椿 昌道装幀 中島 雄太 (YUTA Design Studio)発行人 松井 和哉(厳奈那堂出版)発行所 厳奈那堂出版+A組織〒085-1203 北海道阿寒郡鶴居村鶴居西6-8-7 ツルイの小屋内印刷 日本写真印刷コミュニケーションズ株式会社プリンティングディレクター 渡辺 穣製本 有限会社 栄久堂

本写真集は”ARTIST IN RESIDENCE at TSURUI, AKAN, HOKKAIDO SERIES” として刊行されました。ISBN 978-4-9907923-6-7 C0072

アクリル装343×234.5mm87P